店名の由来

どうして「亀翁窯」ではなくて「分室」と付けたのかと、良く聞かれます。諸々ありますが一番の理由は、私のフラワーアレンジメントの先生でもある北原先生が、麻布に開いた素敵なお店『亀翁窯』は、先生限りの空間で、でも、その空気をお裾分けを頂く意味を込めたかったからです。

ある寒い曇り空の土曜の午後。東京タワーの近くを散歩がてら、歩いたことのない道を進んで突き当たると、木目の看板と陶器が印象的なお店を見つけました。
『わぁ、きっと私には手が出ないような品物だろうなぁ』
とガラス越しに眺めている私を手招きしてくれた女性店主、それが亀翁窯の作品と北原先生との最初の出会いでした。

「丁度良かった、お茶でもどうぞ」
流木で作られた流線型のテーブルに湯呑が置かれ、お喋りが始まりました。
「うちはね、お茶をまずお出しするんです。何も買ってもらわなくて全然良いの。プレゼントでも探す時に、寄ってくれれば。」
明るい声に頷きながら並ぶ作品に見惚れ、こっそりと値札を見ると唐津焼とは思えないようなお手頃価格…私が思わず安いですねと笑うと
「みんな安くて信じられないって言うのよね。それが自慢なのよ」
そこから瞬く間に店主の北原先生と打ち解けたのでした。

気さくで器用で、花と亀翁窯の作品が大好きな先生がご病気になったのは7年ほど前。
魔法のようなお店はおしまいとなり、それでもフラワーアレンジメントを習うのを口実に、先生とのお喋りを愉しんでいました。でも、残念ながら、先生はこの夏帰らぬ人となってしまいました。

亀翁窯の作品が並ぶ店を持ちたいと昨年相談すると、本当に嬉しそうに商いの心得や仕入れ、備品の買い付けについて、あれこれと親身に助言していただきました。

心残りは、先生に私の店舗をご覧いただけなかったこと。でも、それは気にしません。今、一生懸命歩いて物件を捜しているので、そのうち良いところが見つかるはずです。新店舗開店の、その暁には、笑顔で皆さんをお迎えする予定です。入りづらそうにしている方を見かけたら、先生のように笑顔で手招きすると決めています。皆さん、是非お会いしましょう。